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「絶対にアキラメない」から気づいたこと

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2021年1月神静民報「小動だより」

 

 バックスペース、バックスペース…、もう少しで書き上がる記事を私は消した。どうしても書きたいことができた。

 小さな君と私の出会いはおそらく十か月前くらいになろうか。平澤珈琲店の小さな常連さんだった君に、最初は私もうまく挨拶ができなかったが、そのうち挨拶を交わす仲となった。小動だより新春号(まさにこれ)が土壇場になって、「皆さんの今年の目標を写真で載せよう」ということになり、やっぱり写真に子どもや若者がいると、読者も元気でるよね!という軽い気持ちで、私は君に声をかけた。今日の明日という短納期での依頼だったのに快諾してくれた。最初、君は「今年もたくさん食べる~」みたいなことを言っていて、まぁ、小学四年生だし、そんなもんだよなと。

 その夜、君のお母さんから、「娘は、目標何にしようか悩んでおります(苦笑)」、そしてちょっとして「何か書いてました、私には内緒だそうです」。さらには、海にいって写真を撮るというメッセージが。

 次の日、写真が送られて、ポチっと開いた。「なんだ、これは!」衝撃が走った。それはまるで、ドッジボールで強いボールを体の中心でキャッチして、痛いけど心地よい、内臓への衝撃が全身にわたっていくような感覚だった。

 世の中はどんどん複雑になり、ストレスフルになっている。だから必要に応じて「逃げる」ことも大切であることは、今や常識だ。そんな中の「絶対にアキラメない」。それも抜け感のある海辺での写真。君は、私からのタスクをスケジュール通り、企画から実行までやり遂げ、それも素晴らしいものに仕上げた。心から称賛と感謝を申し上げたい。何に対して「絶対にアキラメない」のか、どうして海で撮影しようかと思ったかなど、聞きたいことはたくさんある。でも小学四年生の言語化を私はあまり期待していない。たくさん本を読み、言葉を自由自在に操れるようになる数年後に「絶対にアキラメない」、海での撮影の真意を聞かせてほしい。ちょっとくじけたり、逃げることもあってもいい。この言葉を書いたこと自体に意味があるんだ!

 

 昨年末、WeeklyOCHIAIでマザーハウスの山崎代表がこんなことを言っていた。コロナ渦でも賃金を下げず雇用を確保しているということにおいて、「数字の世界だと安易に切り捨てってなっちゃうけど、取り残さないと決めたらやり方はきっと見つかる。」この言葉が、「絶対にアキラメない」の写真を見たあと、私の頭をよぎった。あきらめないと決めれば、そこからアイデアが生まれるということだ。もちろん、すべてがうまく行くわけではないし、人生折り合いをつけながら生きていくものでもある。でも、「これだけはあきらめたくない」というものがあると、心強く生きていけるのかもしれない。そんなことを気づかせてくれた一枚の写真であった。

 

 急な申し出にも関わらず、「今年の目標」写真のご協力ありがとうございました。先日ようやくフィジカルでのふれあいができた生後5か月の藤吾くん、もっと掘り下げたいスーパー高校生ももちゃん。布団好きの医学生の大先輩は、なんとミュージシャンへの転身?が目標で、マダムの心を鷲掴む実力派ミュージシャンは、体質改善が目標。偶然か必然か、この小田原で出会ったビジネスメンターも、写真を提供してくれた。新年早々ご協力いただきました方々に、心より感謝申し上げます。

 

 今年が皆さまにとって素敵な一年でありますように!

(文/平澤芳栄)

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